研究概要 |
本研究では,50MHz以下の短パルス波を用いて水浸集束型超音波センサーを励起し,固体内部欠陥あるいは微視構造からの散乱波あるいは時間領域での各種表面波信号をデジタル収録し,それらにデジタル信号処理を施して固体内部の微細欠陥・構造の解明,ならびに表面波速度・減衰を用いて表面層の特性評価及び応力を測定することを目的とする.平成9年度の研究で得られた主な知見を以下に示す. (1)低周波音波顕微鏡を用いて,高速衝撃によってアルミニウム板内に発生したスポール損傷(直径10-100μmの空孔)の最大3回までの繰り返し衝撃による変化を非破壊的に観察し,後続の衝撃応力が大きくなるとそれらが成長し,逆の場合には空孔が再接合することを明らかにした. (2)表面に窒化チタニウム薄膜コーティングした炭化タングステンの漏洩表面波速度分散を測定し,2層構造を伝播する波動理論を用いて薄膜の弾性係数を推定した. (3)有限要素法を用いて,線集束型超音波顕微鏡における波動伝播シミュレーションを行い,漏洩レーリー波速度及び減衰,グリーピング波速度等について2%以内で測定結果と一致する結果を得た. (4)従来のCスキャン装置と異なり予め規定した多数の測定点に順次移動でき,x,y,z3軸の並進及びx,y,z軸回りの回転の6自由度を持つ精密スキャナーを制作し,各測定点で内部からの散乱波形,あるいは超音波センサーと試料表面間距離を変えて表面波信号を収録するシステムを構築した.これにより,従来のCスキャン画像による内部欠陥からの反射強度以外の,音速・減衰・背面散乱強度糖の各種超音波特徴量の2次元分布を測定することが可能となる.
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