研究概要 |
LSIやマイクロマシン等の微小な機器・構造物の開発が進められており,それらを構成するサブミクロンサイズの微小要素の把握が要請されている.とくに,要請寸法の縮小に伴って原子オーダーから材料特性を明らかにする必要性が指摘されている.分子動力学法は原子運動を動的にシミュレーションする方法であり,材料のミクロ特性を調べる有力な解析手法であるが,シミュレーション時間がきわめて限定されている点に問題がある.一方,メトロポリス法は平衡状態の静的特性を原子オーダーから解析する手法として開発されたものであり,計算としては効率的に行うことがてきるものの,動的な過程をシミュレーションする手法としての有効性は注目されていなかった.本研究では,LSI配線材料であるアルミニウムを対象としてメトロポリス法を表面と粒界会合点近傍の拡散挙動に適用した.拡散では主に原子のジャンプによって移動がおこることに着目して,試行単位を原子ジャンプとしたメトロポリス法解析を行った.その結果,会合部に粒界溝が形成されることが確認され,さらに,その時間発展はマクロ的な解析より求められた解と良く一致することが判明した.これにより,試行単位等に工夫を加えることによって,メトロポリス法を動的過程(拡散)に拡張して原子シュミレーションの効率を飛躍的に向上させることが可能であることが示せた.ただし,基準時間の決定方法についてはさらに検討の必要性があることがわかった.また分子動力学法によって対応粒界を有する双結晶の粒界拡散および粒界三重線近傍の拡散について検討した.その結果,変形拘束に起因する三重線による原子移動の加速について明らかにした.
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