研究概要 |
本研究では生体微視構造計測と計算科学分野での分子構造解析の最新技術を取り入れて生命体材料の機能発現メカニズム解明,バイオミメティックス材料創成支援さらにはバイオミメティックス材料の機能評価を行うことを目的とした分子力学適応評価試験システムの構築を目指している.本年度は昨年度購入した繰り返し力学負荷装置,および分子レベルの細胞分子形態計測が可能な原子間力顕微鏡装置(既存装置),および分子力学解析が可能なワークステーションを用いて,実験および解析両面から生命体分子の機能解明を試みるものである.本年度は骨格筋細胞および骨芽細胞に繰返し負荷を加えることで生命体分子固有の機能とされる力学負荷に適応した自己組織化・形態変化過程を観察した.細胞は,ラットの骨格筋細胞およびラットの骨芽細胞を用い,シリコン薄膜上に着床した細胞が繰り返し力学負荷によって圧縮方向,つまり引張り負荷方向に直角な方向に回転する応答を示すことが分かった.さらに,自由電子レーザー研究所においてレーザー照射を行い,細胞の受ける損傷・機能喪失について実験計測を行った.筋細胞は引張り圧縮方向から回避するように細胞長手方向を回転させることが分かった.細胞増殖・コロニー生成を行う特性があることが推察される.現在,細胞/分子レベルでの自己組織化,力学適応再構築,不均質および能動的運動という生命体の持つ基本的な機能を備えた人工生命体材料の開発が望まれている.この細胞増殖メカニズムは代替筋の開発と生体内埋め込みにおいて重要な情報と考える.本研究では,走査型原子間力プローブ顕微鏡による分子レベルでの形態・力学計測技術と分子/量子生物学に基づくコンピュータシミュレーション技術を融合することで,生命体分子材料の力学モデルを構築し,生命体材料の中で行われる形態形成・自己組織化のメカニズム解明を行うことを目指している.本年度は筋細胞ユニット(アクトミオシン系分子モーター)および骨細胞のユニットとしてのコラーゲン・ハイドロキシアパタイト複合分子の分子構造解析,分子動力解析を行った.本研究によりアクトミオシン系分子の滑り運動発現,および骨基本分子の形成・分解発現に関する基礎的知見を得た.以上の研究成果は日本機械学会講演論文集および論文集に発表・掲載された.
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