研究概要 |
送り要素として最も一般的な送りねじを使用し,長ストロークにわたるナノメーターオーダ位置決めを簡単に実現する超精密送り装置を開発した.ねじ単体ではかかる超精密位置決めは困難なため,粗動と微動を組合せた.微動は,予圧ダブルナットの予圧を変化させる際のねじ内各部の弾性変形によるねじ軸,ナット間の軸方向相対変位を利用した.送りねじは,ボールねじ,台形ねじの両方を対象にした. まず,微動特性の解析を行い,1Nの予圧変化でナノメーターオーダの変位が得られること,予圧付与方法,ねじ軸支持状態,間座剛性の影響を明らかにした.特に,間座剛性は,予圧を変化させるための間座長さ伸縮量に対するナット変位の割合に関係があり,最大微動範囲と最小微動量決定の重要なパラメータである.台形ねじは,ボールねじのヘルツ接触変形のような非線形変位がないので,初期予圧の影響を受けず,しかも変位は小さい.現在,台形ねじは高摩擦のためほとんどボールねじに置き換えられているが,本方式の最終位置決めの微動では回転を伴わないので,台形ねじの欠点に影響されない. ねじ軸外径20mmのボールねじと台形ねじを使い,テーブル案内にクロスローラガイドを採用した,ストローク200mmの粗微動一体形送り装置を製作した.予圧変化のためのアクチュエータは,積層型圧電素子を用い,そのヒステリシス現象の影響を避けるために,予圧力検出センサーをダブルナット間に組み込んだ. 本装置の微動特性測定の結果,ナット単体変位とテーブル変位はほぼ一致し,ボールねじ,台形ねじの場合とも,最小移動量として,2〜5ナノメータが得られた.
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