研究概要 |
空調機,冷凍機に使用されていた塩素系フロンガスによるオゾン層破壊が社会問題になったため,非塩素系の代替冷媒に切り替えることが義務付けられ,緊急な対応が求められている。冷媒の変更で潤滑油への溶解性の低下し,また塩素のもつ境界潤滑効果がなくなることから従来の経験技術が使えなくなり,新たなデータの蓄積を短期間に行う必要がある。そこで,冷媒圧縮機の設計開発に有効な実験データを効率良く収集できる標準的試験機の確立を目的として,本研究をおこなった。 研究にあたって,申請者らが従来行ってきたロータリー式冷媒圧縮機のベーン先端部の非定常部分弾性流体潤滑解析の結果と従来型試験機を用いた予備実験により試験機に必要な仕様の策定を行った。それによると,空調機、冷凍機の運転条件ではほとんどが接触と流体潤滑が混在する混合潤滑状態であることが判明し,また,従来型試験機ではそのごく一部しか実験できないことが判明した。そこで,冷媒(代替フロン)中の冷媒圧縮機しゅう動面間の摩擦特性をよく模擬できるように,ブロックと円筒面で構成されたファレックス型の摩擦試験機を最大5MPaの冷媒ガス圧の容器に封入し,摩擦力と摩耗率を精度よく測定できる標準的試験機(冷媒雰囲気摩擦試験機)を設計,製作した。 また,弾性流体潤滑と固体接触が混在した部分弾性流体潤滑状態での基油の高圧粘度特性と非ニュートン粘性特性および添加剤の境界潤滑特性を定量的に評価するために,表面あらさを考慮した流体潤滑方程式,弾性方程式,すきまと接触荷重の関係の接触方程式を連立させ,さらに,接触部と粘性せん断の発熱及び非ニュートン粘性を考慮した摩擦力を計算できる数値解析プログラムを作成したが,現在のところ収束範囲が狭いため実機の運転条件をカバーしきれていない。これらは次年度の課題である。
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