研究概要 |
本研究は,冷媒圧縮機の設計開発に有効な実験データを効率良く収集できる標準的試験機の確立を目的として,行われた. 平成8年度には,まず,冷媒雰囲気中の接触部の混合潤滑特性を模擬できる数値解析プログラムの作成を行った.こののプログラムでは,弾性流体潤滑と固体接触が混在した部分弾性流体潤滑状態での基油の高圧粘度特性と非ニュートン粘性特性および添加剤の境界潤滑特性を定量的に評価するために,表面あらさを考慮した流体潤滑方程式,弾性方程式,すきまと接触荷重の関係の接触方程式を連立させ,さらに,接触部と粘性せん断の発熱及び非ニュートン粘性を考慮している.次に作成したプログラムと従来型試験機を用いた予備実験により冷媒(代替フロン)中のしゅう動面間の摩擦特性を測定するための標準的試験機に必要な仕様の策定を行い策定された仕様に基づいた試験機の設計・製作をおこなった. 平成9年度は,製作した試験機を用いて,現在候補に挙がっている代替冷媒と潤滑剤(基油/添加剤)の代表的な組み合わせと,比較のため従前の規制冷媒と鉱油との組み合わせについて混合潤滑領域の全域をカバーする廣井範囲について摩擦特性の試験を行った.また,試験結果を混合潤滑解析結果と比較して境界摩擦係数を推定する方法を確立した. その結果,冷媒と基油の組み合わせについて,代替冷媒のR134aとエステル系,グリコール系基油との組み合わせでは,規制冷媒R22とナフテン系鉱油という従前の組み合わせに比べ境界摩擦係数が高いこと,混合潤滑状態で固体接触割合が少ない領域と,接触割合の高い領域とで,境界潤滑係数が異なる傾向があること,があきらかになった. これらの結果をもとに,今回開発した試験機がどの程度実機の状態を模擬しいるか,従来の試験機と比較した結果,従来の試験機は固体接触割合の高い境界潤滑状態しか模擬できないのに対し,固体接触割合の低い状態も模擬できる点で優れていることが明らかになった.従って,本試験機で得られたデータは冷媒圧縮機で問題となる運転条件全体に適用できるものであり,本試験機より得られたデータを用いることで設計コストを削減することが見込まれる.
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