研究概要 |
分子の固体表面への凝縮(蒸着)現象は薄膜技術として半導体産業,新素材開発,表面処理など現代の最先端工業分野へ応用されているが、薄膜形成過程における物理・化学現象は十分に理解されているとは言い難いのが現状であり、蒸着過程から薄膜結晶構造の形成過程にわたる原子・分子レベルでの早急な解明が渇望されている.このため,本研究では中性金属原子の並進エネルギーを機械的に選別するHostettler-Bemstein型の分子線速度選別器の開発を行い,原子や分子の並進エネルギーが凝縮などの物理現象に及ぼす影響について明らかにすること,さらにはより優れた物性を有する薄膜を作成することを目的としている。 本年度は,長時間使用可能な分子線速度選別器を用いることに加え,従来から一般に行われている蒸着基板を加熱してBi2Te3系の薄膜型熱電素子を作成し,製作した素子の評価を行った。 1.速度選別器の軸受部を改良することにより,さらに長時間にわたって真空中で連続運転可能となった。 2.この速度選別器を用いた長時間の蒸着実験によって,連続した薄膜を作成できるようになったため,熱起電力測定のばらつきを小さくおさえることができ,膜の評価を熱起電力測定により容易に行えるようになった。 3.基板温度と選別した蒸着分子速度の組み合わせにより作成した膜の特性が変化し,通常に作成した薄膜に比べ最高でおよそ2〜3倍程度大きな熱起電力を有する薄膜が作成できた。さらに併せて行った透過型電子顕微鏡の観察により膜の結晶構造を改良することにより起電力特性が改善されることがわかった。
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