研究分担者 |
若林 英信 京都大学, 工学研究科, 助手 (00273467)
山根 常幸 (株)東レリサーチセンター, 材料物性研究部, 研究員
亀谷 雅嗣 (株)日立製作所, 機械研究所, 主任研究員
田中 貞行 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80042969)
馬場 哲也 工業技術院計量研究所, 計測システム部, 室長(研究職)
|
研究概要 |
熱工学の分野での表面の'ふく射'が重要になる局面は2つある.その一つは,ふく射伝熱の評価・設計に掛かる局面であり,他の一つは,ふく射(電磁波,広義の光)に注目する表面の非触面・遠隔計測制御に掛かる局面である.ここで,熱工学の対象とする表面は,工業装置の実環境下にあって多様であるのみならず,その状態は時々刻々にも変化する.すなわち,熱工学の分野で'熱ふく射現象'を扱うについては,理想的な表面の普遍的な性質を扱う固体物理学の方法とは別の研究手法が提案されるべきである.ふく射現象に関して理想的な表面と実在表面を峻別する研究の因子の第一は,実在表面におけるふく射の拡散反射性を明らかにすることであり,その第二は,拡散反射性を考慮しながら伝熱の課題となる可視〜赤外の広いふく射の波長域にわたるふく射の反射・放射などのスペクトルを高速かつ実時間的に測定・解析できる分光法を開発することである.本研究では,まず,実在表面のふく射反射性の様相と機構を明らかにするため,可視偏光レーザを用いて,あらい金属表面のふく射拡散反射の様式を実験的に調べ,これを伝熱評価・ふく射計測の両局面のためのアルゴリズムにとり込む物理モデルを提案した.同時に,可視〜赤外高速分光測定装置の開発を進め,現在,その可視〜近赤外測定部が完成している.この装置の有用性を検証するために,高温大気酸化過程にある金属表面のふく射反射性質の過渡挙動を調べ,推移するスペクトルが結晶の表面酸化にともなう薄膜干渉と多結晶粒の非均質成長にともなう表面あらさの発生に強く特徴づけられるようすを観測した.次年度には,このスペクトル測定装置の波長域を赤外域にまで拡張し,伝熱評価に関する実在表面のふく射現象を解明し,また実在表面の物理に基づいて,実在表面の温度・正常のインプロセス計測・制御を可能にするハード・ソフト系としての高速分光計測法の完成をめざす.
|