研究概要 |
本年度においては,本科研費で新しく購入したスペクトル検出システム2式と既存の分光器を改良したスペクトル検出システムを組み合わせて,多地点多波長同時スペクトル観測システムを構築した。主として,平板状ノズルアーク装置の電流零点近傍におけるノズル内温度分布の過渡推移を実測した。その主な実測および検討結果は次の通りである。 ・鉄電極を備えたSF_6ガス吹付け平板状アーク装置において,電流零点前後の鉄原子スペクトル線2本およびバックグラウンド光の計3波長のスペクトル強度の時間変化を3地点同時に観測した。ここでは,鉄原子スペクトル線として,波長426および442nmを採用した。電流波高値2kA,SF_6ガス流量50l/minで過渡回復電圧TRVを印加しない場合について,残留アーク温度分布の過渡推移を求めたところ,上流側の方が低い傾向にあることが分かった。また,電流零点後約40μsで温度は3,000Kにまで低下している。 ・高温空気および高温SF_6ガスの粒子組成,熱力学および輸送特性を理論的に算定した。その結果,鉄蒸気が質量比で10^<-2>%混入しても,それらは純粋SF_6ガスの場合とほとんど変わらないことが判明した。 ・鉄原子スペクトル線およびバックグラウンド光の放射強度測定値を利用して,鉄蒸気混入率を算定する方法を考案した。ここで,バックグラウンド光として,4種の連続スペクトルの他,S_2分子スペクトルの考慮すべきであることを明らかにしている。本実験の場合,鉄蒸気混入率は10^<-2>%程度であることが分かった。 ・平板状アーク装置のノズル軸上において一次元エネルギー方程式を数値的に解き,過渡回復電圧印加時における温度の過渡推移を求めた。この結果,本装置の遮断限界が過渡回復電圧上昇率8V/μsであると推定でき,実験で得られた遮断限界と同オーダであることを確認した。
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