研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き電流零点以降におけるノズル空間域の残留アークの内部構造を実験的・理論的に検討するとともに,ポストアーク空間の熱的非平衡性について理論的な解析を試みた。その結果,次の知見を得た。 1.アーク消滅前後における極間の抵抗率の上昇過程について詳細に検討した。まず,熱平衡の仮定に基づいて,鉄蒸気が混入したSF_6ガスの抵抗率の温度依存性データを用いて,過渡回復電圧が印加された平板状アーク装置における抵抗率分布の時間変化を明らかにし,導電性の高い部分を「熱プラズマ接点」とみなす新しいモデルを提案した。さらにその開極動作によって,アーク遮断の成否を説明することに成功した。 2.SF_6ガス高気圧熱プラズマからの放射パワーを理論および実験的に検討し,電気的に入力に対して,大電流領域では放射パワーは電気的入力の20〜40%に達していることを明らかにした。この放射パワーはポストアークにおいては,非常に低くなっていると考えられるが,電流零点直前までは大きな損失として残っており,その影響も無視できないものと考えられる。 3.電流零点後に遮断器の極間に高い過渡回復電圧が印加される場合について,熱的非平衡性の影響を検討するための基礎データとして,電子温度がガス温度より高い二温度状態におけるSF_6プラズマの粒子組成および導電率を算定している。ここでは,励起温度として,電子温度,ガス温度および各粒子間の衝突頻度に依存する「有効励起温度」を新しく導入することを提案している。その結果,ガス温度が4000から6000Kにおいては,電子温度の上昇に従って導電率が急激に上昇することが明らかになり,アーク遮断過程に熱的非平衡性が影響を与える可能性があることを示唆している。
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