研究概要 |
電力用デバイスの電気絶縁・熱伝導膜として利用可能な窒化アルミニウム膜を,真空アーク蒸着法で生成する技術の確立,およびその装置の開発を進めた。真空アーク蒸着法において,真空アークを蒸着に利用する圧力範囲(0.1〜5Pa)で安定に放電させ,かつ蒸着に必要な時間(〜10分)だけ持続させなければならない。しかしながら,従来の窒化アルミニウム膜生成用真空アーク蒸着装置では,圧力が0.3Pa以下では,放電が安定せず,持続しないという問題があった。本年度は,この問題に対し,アルミニウム陰極の形状および負荷電圧の異なる電源を用い、アークの持続性を調べた。その結果,陰極の縁に設けてある陰極点飛び出し防止壁を高くし,かつ,負荷電圧の高い電源を用いれば,アークが持続することがわかった。しかしながら,負荷電圧があまり高い電源を用いると,異常放電が生じ,装置各部の絶縁破壊をもたらす恐れがあることが判明した。 一方,真空アームのプラズマ状態を把握するため,質量・エネルギーアナライザーを用い,予備的実験として,窒化チタン膜生成用の真空アーク蒸着装置においてプラズマ診断を行った。その結果,従来の分光分析法では同定できなかったN,N^+がプラズマ中に多量に存在し,また,TiNも微量に存在することがわかった。さらに,Ti^+,Ti^<++>,Ti_2^+,N^+,N_2^+のエネルギーを計測した結果から,NおよびN^+は陰極点近傍で生成されていることが示唆された。 次年度は,陰極表面へ印加する磁界の構造を変え,陰極点飛び出し防止壁がない陰極でアークが安定に維持できる装置の開発を目指す。また,AlN膜生成用の真空アークプラズマのプラズマ診断を行い,AlイオンやNイオンのエネルギーを調べ,AlN膜生成に適切なプラズマパラメータを明らかにする。
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