研究概要 |
昨年度に引き続いて、標記の課題研究を更に推進するため、従来の実験装置を一部改造して、固体試料の加熱による熱脱離法ばかりでなく,熱電子の衝撃(電子刺激脱離)法による負イオンについても、同時に分離・検出できる新方式の開発を試みた。その結果、(1)例えば試料がSrH_2の場合、加熱初期の段階で検出されるH^-の放射量は、熱脱離に由来するものが非常に多い。しかし、(2)加熱開始後約30時間程度経過すると、刺激脱離によるH^-の方が多くなり、熱脱離の約30倍にも増加する。従って,(3)両脱離法を併用すれば、効率よくH^-が取り出せることになる。 次に、熱脱離による負イオンの生成機構を別の角度から更に追求するため、全く新しい実験装置も設計試作すると共に、定速昇温脱離方式も併用して、負イオンや熱電子ばかりでなく、試料の熱分解反応に基づく中性の脱離成分も同時に分離・検出できる方法も開発した。測定後の定速昇温スペクトルを解析したところ、(1)例えば試料かNaHの場合、熱分解によって放出されるH_2ガスは、熱電子と共に約800Kで最大となり、(2)NaH→NaH_2/2の熱分解反応によって仕事関数の低い活性点(主にNa)が生成されるために、(3)H^-の生成が促進されて約900Kでピークを示し、さらに、(4)約1000K付近では、基質金属(Mo)上の吸着層からH^-が強く放射される,ことなどが判った。 以上の研究成果は、平成9年の応用物理学会春季年会(於船橋、招待講演)、第7回イオン源国際会議(於タオルミナ、イタリア)、日本化学会九州・中国四国支部合同大会(於宮崎)において,口頭発表すると共に,「アイオニクス」や“Rev.Sci.Instrum."誌上に印刷発表している(裏面参照)。
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