研究概要 |
本研究は,Spinning Water Atomization Process(SWAP法=高速回転水流アトマイズ法)を用いて,優れた軟磁性を有するアモルファス粉末を作製し,さらに,これら粉末を原料粉として,成形バルク化を行い,高周波電力用のアモルファスまたはナノ結晶の粉末成形磁心を開発することを目的としている。 本年度は,研究計画に従って,まづ,Fe-Si-B系を基本組成とする急冷凝固粉末を試作した。試作粉末をX線回折並びに磁化測定で調べた結果,45μm以下の微細粒から200〜300μmの粗粒に至る広い粒度範囲で,良好な軟磁性をもつアモルファス粉末が得られていることを確認し,SWAP法がアモルファス粉末の製造法として高い生産性と十分な急冷速度を有していることを明らかにした。 次いで,これら試作Fe系アモルファス粉末に10%程度の少量のガラス粉末を混合した後,ホットプレス法を用いて,結晶化温度以下の比較的高い温度で加圧成形を種々の条件で行った。その結果,450〜490℃の温度で1〜1.5GPaの圧力で成形した場合,透磁率約100(周波数特性1MHz),100kHz,0.1Tの励磁条件で,磁心損失13〜15[J/m^3]の特性が得られた。これら試作アモルファス粉末成形磁心の高周波特性は,商用のギャップ付きアモルファス薄帯磁心やセンダスト磁心とほぼ同等で,前者に対しては漏れ磁束が極めて小さく,後者に対しては飽和磁束密度が高い利点を有しており,また,フェライト並みの任意形状の加工性も有しており,チョークコアやフライバックトランスとして実用化の可能性が期待できるなどの成果が得られた。 さらに,昇降圧形コンバータによる回路試験を行い,良好な結果を得た。 今後,さらに低損失化を図るために,合金組成と成形条件の詳しい検討を行う予定である。
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