研究概要 |
本研究は,Spinning Water Atomization Process(SWAP法=高速回転水流アトマイズ法)を用いて,優れた軟磁性を有するアモルファス粉末を作製し,さらに,これら粉末を原料粉として,成形バルク化を行い,高周波電力用のアモルファスまたはナノ結晶の粉末成形磁心を開発することを目的としている。 本年度は,初年度のFe-Si-B系の急冷凝固粉末の成果を基に,合金組成並びに粉末作製の方法・条件を詳しく検討し,Fe-Cr-Si-B-C系アモルファス粉末を作製を試みた。その結果,平均粒子径40μm(初年度比の1/3),保磁力Hc=0.2-0.3[Oe](初年度比の1/2以下)の粒径の小さい良好な軟磁性をもつアモルファス粉末を作製することができた。 さらに,初年度と同様,これら試作アモルファス軟磁性合金粉末に10%程度の少量のガラス粉末を混合した後,ホットプレス法を用いて,結晶化温度以下の比較的高い温度で加圧成形を行った。本年度は,磁心損失の低減を図るために,軟磁性の向上と粉末の粒子間絶縁の改善を進めた結果,チョークコアやフライバックトランスとして実用化可能な透磁率100(周波数特性1MHz)を有する磁心で,100kHz,0.1Tの励磁条件で,磁心損失6〜7[J/m^3](初年度比の約1/2)の特性を最近達成した。この値は,上述の用途の商用のギャップ付きアモルファス薄帯磁心やセンダスト磁心の1/2の低損失で,前者に対しては漏れ磁束が極めて小さく,後者に対しては飽和磁束密度が高い利点を有しており,また,フェライト並みの任意形状の加工性も有しており,実用化が期待できる成果が得られた。
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