研究概要 |
1)有機金属気相拡散選択エピタキシ-技術の開発:モノリシック光集積回路を作製するにあたり,能動素子と受動素子を一括集積化する技術として,有機金属気相拡散選択エピタキシ-(metal-organic vapor phase diffusion enhanced selective area epitaxy:MOVE^2)を新たに開発した.これを用いると,1.55μm帯における能動領域と受動領域のバンドギャップ差を,組成の差のみの場合で200nm,組成と量子井戸層厚の差の両方を利用できる場合で500nmと,従来に比べ格段に大きくできる.従って,受動領域の吸収損失を最少限に抑えることが可能となる.この選択成長は,気相拡散成分を表面拡散成分に比べ増大させることを目途にデザインした特別なマスクパターンを用いることによって実現される.本MOVE^2のもう一つの特徴は,従来の選択成長と異なり,密に配置されたアレイ状の導波路の作製に適用できることである. 2)MOVE^2を利用したMMIカプラの試作・開発:上記MOVE^2を応用して,多モード干渉(multmode interference,MMI)カプラの作製に初めて成功した.SiO_2のマスクパターン幅は,MMI出力側導波路の内側を2μm,それ以外のすべてを6μmとした.導波路幅は2μm,MMIカプラ部の幅は6μmである.1.25μm組成のInGaAsPをコア層とし,その上にInPクラッド層をMOVE^2により形成した.MMI部の膜厚のばらつきは,伝搬軸に垂直な方向で5%以内,伝搬軸方向で10%以内であり,従来の選択成長より格段に小さくなっている.このMMIカプラにおける出力のばらつきは無視できる程度であって,挿入損失はMMI部の長さが30μmの時に2dBであった.この損失の主要因は,出力曲り導波路部の曲り角度が大きいことによる導波路側壁の結晶面ステップである.
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