研究概要 |
1.有機薄膜の結晶性の改善に関する実験 CuPcの場合,HeNeレーザを薄膜堆積時に照射することで結晶性を改善できることがわかっているが,照射方法と改善度について実験を行なった.光励起によるマイグレーション効果を考えた場合,プルーム励起によっても同様の効果が期待できるが,改善は得られなかった.すなわち,薄膜形成時に長時間の光励起が必要である.HeNeレーザ強度に対して本効果が1mW/cm^2近傍で飽和傾向にあることも判明した.また,基板の種類には無関係であることもわかった.一方,DC電界を印加すると著しい結晶性の向上が得られた.電界の極性に依存しないことから,分子の分極が電界によって揃う効果があることが判明した.薄膜形成時に行なうことで,低温で結晶の配向を得ることができる.今後,CuPcのような平面状に展開した分子以外で確かめる必要がある.この電界による結晶性の制御も空間的分解能は劣るが電界発光のパターン化に応用可能である. 2.混合有機薄膜中のエネルギー移乗に関する実験 電界発光の波長域を広げる手法として,混合有機薄膜が用いられているが,光励起による電子的活性過程を含むアブレーション法で,混合有機薄膜の機能性を検証した.Alq3にDCM色素を混合した薄膜は,XPS,FTIR測定からは新しい結合の発生は確認できなかったが,電界発光スペクトルは明かに短波長に広がっており,真空蒸着で得られる薄膜とは異なっている.また,電界発光素子のCuPcとAlq3との界面における励起子再結合からDCMへのエネルギー移乗によるDCMの発光も確認された.従って,アブレーションで作製された薄膜においては有機分子間のエネルギー移乗を起こすに十分な品質が維持されていることが明かになった.
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