研究概要 |
1.電解印加による有機薄膜の配向性制御に関する実験 薄膜堆積中にDC電界を印加することで,分子の分極力によって銅フタロシアニン(CuPc),DANSの配向が変化することをX線回折測定から明らかにした。さらに,斜入射FTIR測定から,確かにCuPcの分子構造が通常よりも電界方向に揃っていることを確認した。さらに,基板の結晶場力が強く,分子配列に影響するような強い相互作用のある条件でこの電界配向の特性を調べた。基板として,雲母,KCI,結晶性CuPc膜を用いた。雲母の場合には分子のb軸が基板に平行な分子構造をとりやすいが,電界印加によってc軸が基板に垂直な方向に移行することが確認された。一方,KClは分子平面が基板と平行になるように配向するが,電界をかけた場合には,結晶性のピークがむしろ現象してしまった。CuPc蒸着膜を基板にした場合も,電界による変化は見られなかった。以上より,基板と分子が強い相互作用を持っている場合には,電界による配向の制御は,少なくとも現在用いている比較的低い電界強度(50V/3cm)においては効果がないことが判明した。基板相互作用の大きい場合には,HeNeレーザ励起,基板温度の上昇などの,単純にマイグレーションを助けるような作用には結晶性向上の効果がある。 同様の実験をDANS分子で行った結果,電界印加によって複数あった結晶性ピークが1つになり,薄堆積中においても電界に対して強い分極応答を示すことが判明した。 2.薄膜の伝導度 配向性の異なるCuPc薄膜の電気電気伝導率を測定したところ,アモルファス状の薄膜に対して,配向性の改善された薄膜は,面方向の伝導性に上昇が見られた。また,厚さ方向についてはアモルファス性の膜の方が高い伝導性を示し,電界発光素子には適していることが判明した。
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