研究概要 |
近年,わが国の救急救命率の低さが指摘され,救急現場および搬送途中の医療の充実が強く望まれている.傷病者の状態を早期の段階で医師に伝え,その指示を仰ぐ必要性が認識されながら,現在のところそれを実現する手段は実用化されていない.本研究は,この要請に応えるため,バイオテレメトリ手法と情報処理および情報通信技術を総合することにより,実際的な小容量無線回線を用いて,カラー画像とともに傷病者のバイタルサイン(心電図,血圧など)を,高度な信頼性を保ちながらリアルタイム伝送する実用的な方法を開発することを目的とする.本年度は下記のように,主として情報圧縮・多重化方式の開発,システム各部の設計・製作を行った。 1.生体信号を無拘束的に計測し,間接散乱光通信により無線装置入力部に供給する光モレメトリ装置を考案・試作した. 2.多チャネルの生体信号を多重化する方法として,スペクトル拡散法の導入を考え,その可能性について基礎的検討を行った.基本回路を設計試作し,間接散乱光による伝送実験を行った. 3.実用性の高い方式として,既存の音声チャネル内で音声と生体信号をアナログ多重化する方法を考案した.基本回路を設計試作し,音声伝送に障害を及ぼさず同時に生体信号を伝送できることを実験的に検証した. 4.汎用性の高い方式として,音声チャネルで使用可能なディジタル多重化方式を考案し,基本回路を設計試作した.3チャネル心電図や,心電図と血中酸素飽和度波形の同時伝送を行い,その有用性を検証した. 5.情報伝送の実時間性を確保しつつ電磁干渉やノイズの影響を抑える誤り制御方式を設計した.データ伝送実験により,その性能を評価した.
|