研究概要 |
特性解析と制御系設計のために,MMS(Modular Modeling System)を用いて,給水系,燃料系,ボイラ系,過熱系,再熱系,スプレ系,及び各PID制御系を含んだ発電プラントシミュレータを開発した.同定実機試験により,シミュレータの正確性の評価を行い,満足な結果を得た.このシミュレータを用いて,発電プラントの全体の非線型特性を把握した. 次に制御系の基本構成に関して考察した.現在現場で使われているPIDを中心とした温度制御系を検討した上で,その欠点を認識し,負荷指令と圧力指令から燃料制御系と過熱温度制御系までの動的前向き制御系+フィードバック制御系を構成した. 制御系設計のために用いるモデルとして,負荷とドラム圧力による発電ボイラの特性変動が反映できるように,高,中,低負荷帯及び高,中,低ドラム圧力帯における線形モデルを用いた内挿ゲインスケジューリング時変モデルを作った.そのために,各負荷帯,各ドラム圧力帯における線形近似モデルを,シミュレータにM系列信号を印可し同定実験を行うことで求めた.この時変モデルが非線型シミュレータの特性をよく近似していることを確認した.また,各負荷と圧力帯に於いて,プラントが非最小位相特性を持っていることが分かった. 内挿ゲインスケジュリング時変モデルに基づき,プラントの非最小位相特性を考慮して,負荷指令と圧力指令に対して内挿ゲインスケジューリング前向きコントローラ+PIDコントローラからなる蒸気温度Cascade制御系を設計した. 高,中,低負荷帯における小幅な圧力変化,高,中,低圧力帯における小幅な負荷変化,大幅な負荷変化,大幅な圧力変化に対してそれぞれ蒸気温度制御のシミュレーションを行った.従来のPID温度制御系より蒸気温度の偏差がは著しく改善され,約半分まで減ることがわかった.
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