1)PVDF膜センサーを使う“ダイレクトセンシング法"の信号解析のモデルについて検討した。実験に使用する変調周波数が低いことを考慮し、多層構造試料の熱波の伝搬の理論を基礎として解析を行った。黒鉛試料の光音響信号の周波数依存性を求めた結果、シミュレーション値と実験値が一致した。これより、提案したモデルが妥当であると思われる。 2)光源とセンサーを一体化できる可能性のある新しい“光透過型PVDF焦電センサー"と“光透過型PVDF圧電センサー"を考案した。黒鉛試料の光音響信号を測定した結果、両センサーとも試料の熱的情報らしきものが観測されたことより、本センサーが使えそうであることを示した。 3)測定装置の簡略化、測定時間の短縮化および観測信号のS/N比の向上を目的として新しい計測法である“拡張同時多周波数計測法"を提案した。本方法は黒鉛の光音響信号が1/f依存性に従い高周波成分ほど減衰することを考慮し、変調レーザ光波形の周波数成分にあらかじめf依存性を持たせるものである。本方法の計測手法を以下に示す。f依存性を持たせたパルス列を逆FFTにより合成波を作成、これをAOモジュレータのアナログドライバに入力して変調光を作成する。試料から得られた光音響信号波形をBoxcar積分器で測定し、パソコンに入力後FFTで各周波数成分を求める。このため、1回の測定で多周波数成分の情報を得ることができるため、測定時間を大幅に短縮できる。 4)拡張同時多周波数計測法を用いることにより、同時多周波数計測法を用いた場合よりも100Hz成分の光音響信号振幅のS/N比が5dB改善できることを明らかにした。さらに拡張同時多周波数計測法では、従来のLock-inアンプを使う計測に比べて計測時間を56%程度短縮できることを明らかにした。さらにBoxcar積分器を使えば、完全自動計測ができることも示した。
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