研究課題
基盤研究(A)
大口径鋼管を用いたライフラインの構造上・施工上の弱点は継手である。現在、最も信頼性の高い溶接継手工法は熟練技能者や特殊機器・電源が必要で、大口径化が進むと、技術的に現場溶接はますます難しくなってくるものと考えられる。本研究は、高膨張モルタルを用いた鋼管継手工法の開発・実用化を検討するものであるが、その概要は、スリーブ管を被接合鋼管の突き合わせ部分にかぶせ、その隙間に高膨張性モルタルを注入し、生じる膨張圧によって大きな付着力を発生させて鋼管を摩擦接合する方法である。平成8年度に検討した項目と得られた結果の概要を以下に列挙する。(1)市販の高流動モルタルと高性能膨張剤を適当に配合することにより、12時間程度で所定の膨張圧が生じる短時間用高膨張モルタルが得られることを実証した。(2)スリーブ管と被接合管とからなる二重管の隙間に高膨張モルタルを注入して、押し抜き試験供試体を作製して、モルタルと管との付着性状を調べた。その結果、水圧に十分抵抗可能な付着力を有することが確認された。(3)項目(2)の検討結果を参考にしてスリーブ管の直径・長さを変えて、継手供試体を作製し、水圧曲げ試験を実施した。水圧は水道管の継手に要求される最大圧30kgf/cm^2まで加圧し、漏水の有無を調べた。また、加圧した状態で、曲げ試験を実施し、最大曲げ耐力たわみ量、被接合鋼管の折れ曲がり角度などを測定し、同時に漏水の有無を調べた。それらの試験結果から、本工法による継手は、ライフライン等の大口径鋼管の継手として要求される以上のレベルの水密性、力学的特性を有しており、十分実用可能なことが明らかとなった。