「ひまわり」衛星画像の受信とデータ取り込み・保管のためのハードウェアの整備はほぼ完了した。併せてソフトウェアの整備を行い、データの取り込みから、必要領域データの切り出し、衛星姿勢の検出、一定時間間隔の保存、幾何学的変換と補間によるメルカトール図の作成、経緯線・地形線等の不要情報の除去、といった一連の作業が可能となった。このソフトウェアは、文部省のGAMEプロジェクトにも提供され、また国際強力事業団の洪水対策に関わる日本-バングラデシュ共同研究に関連してバングラデシュ工科大学でも活用されている。 これらのプログラムを利用して、最近バングラデシュに災害をもたらした竜巻の追跡を行ない、その発生・発達から予想外に複雑な移動経路までの検出に成功した。一方、検証データの得られる利根川上流の小流域を対象として、画像データから降雨量を推定する試みを開始した。これまでのところ、降雨ならびに出水の有無について定性的な相関は認められるものの、定量的には満足すべき成果を得ていない。本来、この手法は、大規模水系に適していることから、今後モデル水系の選択にも意を用いる必要があろう。 以上の実績から、この手法が現在現地で稼働中の気象レーダをしのぐ情報入手手段となることが期待される。本研究は追加採択となったため研究期間が不十分で、赤外線画像の温度情報を水文量に結びつけ、ガンジス水系の流出推定を行なう作業は、やっと緒についた段階である。来年度研究の継続が認められれば、引き続き推進して行きたいと考えている。より広範囲の研究者にこうしたデータ処理のツールを供給する意味で、現在MS-DOSベースとなっているプログラム群をWindowsベースに切り換え、解析対象地域を全球レベルで任意化することも、当面の課題となっている。
|