研究概要 |
本研究は多方向不規則波の作用波力を最終的には取り扱うが,本年度はその最も単純な形である斜交波(二方向波)を対象として,水理模型実験と理論解析を行なった。研究分担者はそれぞれの分担課題について精力的に研究を行ない,次に記す新しい知見を得た。ここでは分担者別に記すのではなく,それらを綜合して記述することにする。まず,平面波浪水槽(30^m×23^m×1.2^m)で半径30^<cm>のアクリル製の円筒模型を単体あるいは複数体設置して,斜交波の交差角,周期と波高を変化させて,円筒に作用する波力の特性に検討を加えた。その結果,斜交波の交差角が主波向とそれに直角方向の波用波力に大きな影響を与えること,複数の円筒の場合は設置間隔によって若干変化するものの主波向と直角方向の力が予想以上に大きくなることが明らかになった。ついで,非線形回折波理論の開発を試みて,2次オーダーの厳密解を単円筒構造物に対して,複数円筒については2次オーダーの近似解の誘導に成功した。そして,水理模型実験の結果と比較して,誘導した理論解は実験結果とよく一致することを明らかにした。斜交波の構成波が0.013と0.020の波形勾配より大きな波形勾配を持つようになると,線形理論解は過小評価となるので,より正確な作用波力の算定のためには本研究で誘導した2次オーダーの非線形理論が必要となることが明らかとなった。
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