微動データを有線で1点に集められる小アレイ観測について、レイリー波・ラブ波分散曲線をリアルタイムで求めることが可能な計測解析処理システムおよびそれを制御するソフトウェアーを作製した。さらに、微動データを有線で1点に集められない大アレイ観測についてGPSによる絶対時間取得のソフトウェアー開発を計ることで、微動の大アレイ観測からレイリー波・ラブ波分散曲線を抽出するシステムを開発した。次に、微動に含まれるレイリー波ラブ波分散曲線の理論解を高次モードまで考慮して導き、その結果に基づいて、高次モードの影響を考慮して、表面波分散曲線からS波速度構造を同定する逆解析手法を開発した。以上から、微動のアレイ観測に基づいて、基盤までのS波速度構造を推定する探査システムを構築した。 提案する探査システムの地盤地震工学への応用の可能性を検討するため、神戸市内、釧路市内で微動のアレイ観測を行って、両市内の数地点において基盤(神戸市で深度1〜2km、釧路市で深度20〜100m程度)までのS波速度構造を推定した。探査結果を微動の1点観測から得られる水平鉛直振幅比と併用することで、両地区のS波速度構造の2次元断面が推定できる可能性を示した。さらに、推定されたS波速度構造に基づく1次元応答解析を行って、結果を兵庫県南部地震や釧路沖地震の際に得られた強震記録と比較検討することで、提案する探査システムの有効性を確認した。また、神戸地区のS波速度構造断面に対する1次元有効応力解析から、兵庫県南部地震の建物被害分布が、各地点の地盤の1次元増幅特性に強く依存していることを示した。
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