建築材料の最も基本的な音響性能に遮音性能があり、板状材料の音響透過損失値を知る方法として「質量則」が広く知られ、一般には「残響室法音響透過損失の計測法」がJIS規格として確立している。しかし、音波の波長と板の曲げ振動の波長との一致同調現象で遮音性能を大きく低下させるコインシデンス効果での実際の低下具合は、予測は不可能の状態にある。 本研究では小面積試料を用いて一般の室でも上記の遮音性能を計測評価する方法の開発に着手して、途中経過として以下の様な結果が得られつつある。 (1)900mm X 900mm程度の小面積試料を4隅を点支持して下方のスピーカーからホワイトノイズを放射し、それの拠る板での励振状態と板を透過する音波を計測する手法を試験した。 (2)入射音に対する板状での励起振動や透過音の伝達関数を計測したが、その分析結果には質量則に類似した周波数特性が観測される。試料の面密度の違いによる透過伝達特性の明瞭な差異が認められる。 (3)小マイクロホンを重い金属キャップで囲い、回折波を遮断し、透過音のみ受音可能である。 (4)板材料への入射方向を水平とすることで、コインシデンス効果が伝達関数での顕著なピークとして容易に観測可能なことが判明した。 (5)以上の計測は一般の室で可能であり残響室や無響室は不要なことが確認された。
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