研究概要 |
本研究は、(Ba,Sr)TiO_3系半導体セラミックスを基本組成とするノイズ或いは高周波サージ吸収デバイスとしての高容量、低電圧型バリスタの新規製造法に関するものである.現在多用されている高容量型SrTiO_3系バリスタの製造には、還元焼成の後、粒界のみの選択的再酸化処理という2段階の焼成過程を必要としており、生産コストの低減と特性の安定化の観点から、大気中、1段の焼成による同様の機能を持つバリスタ材料の製造法の確立が強く望まれている.申請者らにより開発された-60-100℃にキュリー点を持つ(Ba,Sr)TiO_3系半導体セラミックスバリスタは、このような要請を満すものであり、その実用材料としての特性改善と製造法の確立が本研究の目的であり、これまでに得られた成果の概要を記す. 1.バリスタ特性の評価:本材料系における正の抵抗温度係数(PTCR)領域におけるバリスタ特性の解析から、バリスタ特性における非線形係数が粒界障壁層の高さと共に増大し、PTCR領域を超える温度では障壁層の高さが一定と考えられるにも関わらず、温度と共に減少することを初めて定量的に示した.即ち、実用材料としての特性制御のための重要な情報を得ることが出来た. 2.ゾルゲル法によるドナー添加BaTiO_3超微粉体の合成:申請者らの研究グループが新たに開発した高濃度のアルコキシド溶液を用いるゾルゲル法により、室温で結晶化度の高いLa添加BaTiO_3超微粉体の合成に成功した.従来の低濃度アルコキシドゾルゲル法により得られる粉体では、半導体セラミックスを得るのに有機物除去のための仮焼(600℃前後の温度)を必要とするが、本法で得られた粉体は結晶性が高いため仮焼の必要がないことが確認された.今後、目的組成の(Ba,Sr)TiO_3粉体を合成する. 3.積層用グリーンシートの作製と焼成:予備実験として、市販高純度粉体を用い(Ba,Sr)TiO_3の組成を持つドナー添加粉体を調製し、ドクターブレ-ド法により10〜30μmの膜厚を持つグリーンシートの作製を行った.これらのグリーンシートを積層圧着して100μm程度の厚膜を得、所定の温度で焼成することにより(Ba,Sr)TiO_3半導体セラミックス厚膜の作製を行い、目的とするセラミックスを得るための作製法を確立した.今後、超微粉体を用いた低温度焼成による粒成長、組織制御焼成法の確立を目指す. 4.単一粒界のPTCR特性の解析:特性の改善に粒界組織とPTCR特性の関連の解析が不可欠であるが、単一粒界を用い、その定量的な解析に初めて成功した.
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