研究概要 |
1.不働態皮膜の不均一性を評価するための走査電気化学顕微鏡の試作に成功した。走査プロープ電極には、ガラス管に封入した直径5μm〜10μmの白金線(先端はディスク状)を採用した。プロープ電極の電位と試料電極の電位を独立に制御できるように,市販のバイポテンショスタットを改良した。プロープ電極の走査は,0.1μmの分解能でXY軸およびZ軸ステージをオートマイクロエンコーダ/コントローラで駆動させることのにより行った。プロープ電極と試料電極間の距離調整(約10μm)および試料表面観察のために,250倍の光学顕微鏡を取り付けた。 2.直径2mmの純鉄線をエポキシ樹脂に垂直に埋め込み,その断面を最終バフ研摩して鏡面仕上げしたものを試料とした。pH8.4ホウ酸塩水溶液中で,鉄上に厚さの異なる不働態皮膜を作成した後,溶液をFe(CN)_6^<4->を含むpH8.4ホウ酸塩水溶液に取り替えた。鉄をFe(CN)_6^<4->が酸化される電位に,プロープ電極をFe(CN)_6^<3->が還元される電位に保持するGeneration/Collection Modeを採用し,その時プローブ電極に流れるカソード電流を試料表面の位置の関数として測定することによりカソード電流像を得た。カソード電流像から,エポキシ樹脂に埋め込まれた鉄線の断面形状を識別することができた。また,不働態皮膜の厚さの増加とともにカソード電流が急激に減少する結果が得られた。 3.幅0.2mmの2枚の純鉄板を0.2mmの間隔でエポキシ樹脂に平行に埋め込んだ試料を用いて,各鉄上に厚さの異なる不働態皮膜作成しGeneration/Collection Modeによりカソード電流像を測定した。不働態皮膜の厚さが異なる2枚の鉄上でカソード電流像が異なり,膜厚の不均一性を評価できることが明らかにされた。さらに,チタン不働態皮膜についても,鉄不働態皮膜と同様,膜厚の不均一性を評価できることが示された。現在,Feed Back Modeを採用し,横方向の分解能を向上させる試みを行っている。
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