研究概要 |
平成8年度では,マイクロ波プラズマCVD法を用いて,成膜中に原料ガス種や供給量を制御する多段階プロセスを導入することにより,薄膜表面のみをはっ水化させた透明・硬質な酸化シリコン系薄膜の低温形成を行った。水滴接触角約110度の高はっ水性,可視光透過率80%以上の透明性,およびスライドガラス並みの硬度を併せ持つ高機能薄膜の作製に成功した。 本年度は,表面形態を制御することによって,水滴接触角140度以上の超はっ水性酸化シリコン系薄膜を,マイクロ波プラズマCVD法を用いて作製した。原料ガスとして,テトラメチルシラン(TMS),ヘキサメチルジシラン(HMDS),メトキシトリメチルシラン(TMMOS)等のメチル系有機シリコン化合物と,フッ素を含んだパ-フルオロアルキルシラン(FAS)の混合ガスを用いた。はっ水性,可視光透過率,硬度,化学結合状態,表面形態の評価を行った。 作製膜表面の凹凸は,原料ガス組成と成膜圧力によって制御でき,凹凸が大きいほどはっ水性が高くなることが明らかとなった。成膜条件をさまざまに変えることにより,水滴接触角160度を越える超はっ水性薄膜を作製することに成功した。一方,凹凸が大きすぎると,それによる光の散乱が顕著になり,膜が不透明となった。超はっ水性と透明性を両立させるためには,作製膜表面の凹凸の高低差を約300nm程度に保つことが必要であることがわかった。また,基板温度を変化させて成膜を行った。基板温度を200℃以上にすると,シンタリング効果による凹凸の減少およびフッ素含有率の減少が起こり,はっ水性は大きく減少した。超はっ水性を発現させるためには,基板温度を100℃以下にする必要があることがわかった。 本研究により,水滴接触角160度以上の超はっ水性をもつ,透明で硬質な酸化シリコン系薄膜を,マイクロ波プラズマCVD法により作製するプロセスが確立された。
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