研究概要 |
当初の計画通り、本年度は炭酸ソーダスラグ処理の銅鍛練への実用化を目的とした以下の研究を行った。 1.スラグ原単位の実証実験のスケールアップ 前年度に引き続き、実験規模の大型化を図るため、購入・設置した大型誘導溶解炉を用いたSbの分配実験を試みた。最初にSbのみを溶銅中に所定量添加しておき、それにすでに得られている基礎実験結果に基づき計算された必要量の炭酸ソーダを添加して、Ar-CO-CO_<>混合ガスを吹き付けることにより雰囲気制御した条件の下、分配実験を行った。分配実験には緻密質および多孔質アルミナ坦堝を組みあわせた自作の坦堝を用いた。しかしながら、溶銅中酸素濃度の正確な制御ができず、スラグが蒸発損失したため、本分配実験によりSbの対するスラグ原単位を実証するまでには至らなかった。この原因を究明し、実験条件および方法の問題点・改善点を明らかにした。 2.As,Sbの除去速度 1523K、Arガス雰囲気下で、初期不純物濃度を500から1500mass ppm、初期酸素濃度を500から4000mass ppmの範囲で変化させ除去実験を行い、除去速度を調査して、以下のような速度論的知見を得た。 (1)総括反応速度は、主に溶銅中の酸素または不純物の物質移動によって支配されている。 (2)Asの除去反応の総括速度定数は、同一条件でのSbの除去の総括速度定数よりも常に高い値を示した。 (3)溶銅中の酸素濃度が比較的低い条件下でAsとSbを同時に除去した場合、初期の段階でSb除去の停滞が起こり、Asの優先除去がみられた。この現象について(1)(2)の知見をもとに考察した。 3.炭酸ソーダ再生および有価金属回収プロセスの設計 湿式処理による炭酸ソーダのリサイクルおよびAs、Sb、Fe,Snの回収が可能となるプロセスフローを、これまで報告されている知見をもとに設計した。
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