研究概要 |
高配向性多孔質マグネシア構造体の製造 凍結乾燥法の原理を応用して,細孔の方向が制御された多孔質セラミックス体を作り,これをセラミックス分離膜用の製膜基材とすることを試みた.今年度は,これまで問題となっていた多孔質体に生ずるクラックの生成を抑えることを重点に検討した. はじめに,実験手順について述べる. (1)原料の硫酸マグネシウム水溶液を調整する. (2)試料溶液を凍結用セルに取り,一方向凝固を行って凍結体を作製する.凍結セルは,底面が研磨仕上げの真鍮製で,側面が塩化ビニル製の円筒形容器である. (3)凍結試料を真空乾燥器に移し,雰囲気温度を制御しながら氷を昇華乾燥する.(乾燥体には,氷の昇華痕が空孔となっていて,その細孔が試料底面から上面に一方向に配向している.) (4)乾燥試料を電気炉に仮焼し,酸化マグネシウム多孔質体を作製する. (5)仮焼体を電気炉にて焼結し,孔配向性の多孔質マグネシア構造体とする. 上記の操作手順にて実験を行い,クラック生成の要因を究明し,次の操作因子を制御することによりクラックの生成を抑えることが可能となった. ・原料溶液濃度を,硫酸マグネシウム-水系の共晶組成よりも塩濃度を高くする ・真空乾燥操作における,凍結体雰囲気温度の制御を厳密に行い,最適の昇音速度に設定する. ・仮焼操作において,凍結乾燥体に含まれる分子内水の除去を行う,室温から400℃までの昇音速度を最適に制御する.また,硫酸塩が酸化物となる熱分解過程における昇温操作を最適に制御する. 以上の操作条件を検討した結果,クラックの生成を抑えた,高配向性多孔質マグネシア構造物を作製することが可能となった.今後の検討課題は,この多孔質体の機械的強度を高めることである.
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