研究課題/領域番号 |
08555188
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋本 健治 京都大学, 工学研究科, 教授 (20025919)
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研究分担者 |
吉田 修一 日本ガイシ(株), 環境装置事業部, 課長(研究職)
向井 紳 京都大学, 工学研究科, 助手 (70243045)
河瀬 元明 京都大学, 工学研究科, 助手 (60231271)
増田 隆夫 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20165715)
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キーワード | 廃プラスチック / プラスチック混合物 / 連続熱分解 / 水蒸気 / ケミカルリサイクル / 触媒分解 / 燃料油 |
研究概要 |
平成8年度は熱分解が最も困難なPETを昇華性物質を生成せず油状生成物に転換する安価な鉄系触媒を開発することに成功した。そこで、本年度はまず、(1)開発した鉄系触媒をPET以外のプラスチックの熱分解に適用するとともに、(2)混合物の熱分解を実施し、さらに(3)生成した熱分解油の高品位燃料油への接触分解を行った。 (1)鉄系触媒を用いた各種プラスチック熱分解:実験には前年度までに使用したポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)に加えてポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6(N6)、ナイロン6,6(N66)を用いた。雰囲気ガスとして水蒸気を用いることで、構造中にエステル結合を含むPC、PBTはPETと同様に加水分解が進行して、それらのモノマーであるビスフェノールAとテレフタル酸にそれぞれ分解できた。また、分解温度を約50K下げられることを見いだした。また、PCとPBTはそれぞれ約25%と12%の炭素質残さを生成するが、水蒸気雰囲気下では残さを1%以下まで低減させることに成功した。その結果、窒素中ではそれぞれのプラスチック固有の熱分解挙動を示すが、水蒸気中で処理することでほぼ同一の熱分解挙動にできることが明らかになった。また、生成物を鉄系触媒に接触させることで、ケミカルリサイクルのプラントの配管閉塞を引き起こすフタル酸系の昇華性物質を完全に分解することに成功した。 (2)混合物の熱分解:上記(1)の研究結果より、プラスチック混合物はPEとPET混合物で代表できることが分かった。そこで、この二種類のプラスチックの連続熱分解を実施した。実験にはプラスチックの加熱とプラスチックと水蒸気の接触効率を向上させる目的で新規に考案したベンチスケールのステンレス製の熱媒体攪拌式トリクルベッド型熱分解装置を用いた。プラスチックは迅速に加熱され、溶融物として熱媒体粒子と一緒に移動して、装置内全体に広がりつつ水蒸気と接触して粗分解した。粗分解生成物は鉄系触媒上でさらに分解され、C20+の重質成分に転換できた。また、生成液虫には昇華性物質は全く含まれていなかった。 (3)熱分解油の高品位燃料油への接触分解:上記(2)で得られた重質油をNi/REY触媒層に水蒸気雰囲気下で連続的に供給した。供給液が重質であるにも拘わらず、ガソリンから灯油相当の高品位燃料油に転換され、生成物には重質成分が全く含まれないが明らかになった。触媒活性は徐々に劣化して行き、それにともない、生成油もガソリン→灯油→軽油へと徐々に変化していった。しかし、触媒を燃焼再生することで活性が再生できることが分かった。さらに、劣化挙動から、5000ton/年の廃プラスチック処理プラントの反応器設計の指針を得た。
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