研究概要 |
本申請課題では,ガソリンのオクタン価向上剤としてジメチルカーボネート(DMC),t-アミルメチルエーテル(TAME),メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)を取り上げた.これらオクタン価向上剤とメタノール(MeOH)混合溶液の浸透気化膜分離特性の解析および合成プロセスから分離精製プロセスまでの一貫した生産プロセスの構築を目的とし,本年度は膜素材の選定および膜分離特性の実験的・理論的解析を主として検討し,以下のような結果を得た. 1.DMC/メタノール混合溶液からのDMCの浸透気化分離において,ポリジメチルシロキサン膜が優れたDMC選択透過性を示すことが分った.DMCの透過流束は,供給液DMC重量分率の増加とともに増加し,また,温度の増加とともに増加した.分離係数は,供給液DMC重量分率の増加とともに減少し,温度による影響はほとんどみられなかった. 2.アクリロニトリル製中空糸膜を,アルカリ加水分解した後,ポリカチオンによりコンプレックス化を行ったポリイオンコンプレックス中空糸膜を用いて,TAME/MeOHの浸透気化を行ったところ,優れたMeOH選択透過性を示すことがわかった.製膜時における加水分解時間を効果を検討したところ,加水分解時間を長くすることにより,TAMEの透過流束は減少するものの,分離係数が大きくなることを見い出した.また,ガラス製多孔質膜上にアクリル酸共重合体を塗布し,薄膜化を行うことにより,MTBE/MeOH混合液の浸透気化分離において,非常に大きくなMeOHの透過流束と分離係数が得られることが分った 3.平衡収着実験によりオクタン価向上剤とMeOHとの混合溶液の膜に対する溶解度を測定し,これをもとに拡散係数が濃度依存性を示すとして,溶解-拡散理論に基づく透過流束式により,透過流束と分離係数に及ぼす供給液組成と温度の効果が表現できた.また,得られた透過流束式とエネルギー収支式を適用することにより,ポリイオンコンプレックス中空糸膜によるパイロットスケールでの浸透気化分離結果を良く説明できることを示した.
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