研究概要 |
本年度は,局所誘電泳動を利用した細胞の配列,エレクトロポレーションおよび単一細胞の膜透過現象の解析に関する検討を行い,以下の結果を得た. 1.細胞の懸濁液を目的の基板と,パターンの型となるマイクロアレイ電極ではさみ,電極に細胞が反発する周波数領域の交流を印加した.細胞が負の誘電泳動力(反発力)受ける周波数領域の交流を印加すると,細胞は電気力線の密度の低い方へ移動する.その結果,細胞は電極の真下の部分へと集合し,電極のパターンと同じ形の配列する. 2.ガラスキャピラリ先端部(先端径,10μm)に3種の電極を配置したエレクトロポレーション電極を作製し,その特性評価を行った.この電極は,2つの電極にパルスを印加し細胞膜に細孔形成させた後,別の2つの電極に泳動用電圧を印加し,キャピラリ内部の荷電種を泳動により細胞内部に注入するような構造となっている.ポレーション電極内部にFe (CN)_6^<4->などの酸化還元種を含む溶液を充填して検討したところ,この泳動用電圧パルスの長さや強さに対応して注入量をコントロールできることが確認できた.また,植物細胞を用いた検討により,ポレーション電極内部の化学種が細胞内に注入できることが明らかとなった. 3.先端径が10μm程度のマイクロ電極を細胞近傍に設置しレドックス電流を計測し,この応答を,デジタルシミュレーションにより解析することにより,細胞膜の透過性を決定した.その結果,Co (Phen)_3^<2+>, Fe (CN)_6^<4->, Fe (CN)_6^<3->の膜透過係数は,10^<-3>cm/s以下で膜を透過しにくいことが示された.一方,フェロセニルメタノールやキノンの膜透過係数は10^<-2>cm/s以上と非常に細胞膜を透過しやすいことが明らかとなった.
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