研究概要 |
本年度は,単一細胞を対象として,(i)キノン類共存下での光合成挙動の解析,(ii)各種酸化還元種の膜透過性の解析,に関して検討した. キノンを含む溶液中で植物細胞膜の近くにマイクロ電極を置き,光照射に伴う細胞膜表面のキノン,ヒドロキノンおよび酸素の濃度変化を測定したところ,光照射するとキノン濃度は減少し,ヒドロキノン濃度は増加した.消光するといずれも元に濃度レベルまで戻った.この現象は,キノンが光照射下で光合成電子伝達鎖からの電子移動によってヒドロキノンに還元されたことを示している.添加したキノン濃度が1mMの場合,1個のプロトプラストに吸収されるキノンは2.5×10^<-13>mol/s,放出されるヒドロキノンは2.8×10^<-13>mol/sとほぼ等しく,細胞内に吸収されたキノンは,すべてヒドロキノンに還元され細胞外に放されていることが明らかとなった.また,キノン存在下における酸素発生速度は3.5×10^<-13>mol/sと通常に比べて約3倍に増加した.このことは,光エネルギーと生体機能を利用した酸素発生システム構築の可能性を示している. また,マイクロ電極を拡散層内に挿入し,生きた単一細胞の各種酸化還元種に対する膜透過計数(Pm)を評価した.その結果,Fe(CN)_6^<4->,Fe(CN)_6^<3->の膜透過係数はPm<10^<-4>cm/s,Co(phen)_3^<2+>はPm=1×10^<-3>cm/s,フェロセニルメタノールはPm=5×10^<-3>cm/s,ヒドロキノンはPm=2×10^<-2>cm/sと決定できた.キノンやヒドロキノンのように分子が比較的小さく,中性型で存在する物質は極めて細胞膜を透過しやすく,対照的に,Fe(CN)_6^<4->のように電荷を持ち,親水性の物質はほとんど透過しないことが明らかとなった.
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