研究概要 |
本研究では,サンプル液に二次抗体とキメラ発光酵素さらに発光基質を添加し混合するだけで短時間に抗原濃度が測定できるホモジニアス免疫測定法を開発することを最終目標とし,エネルギー移動を利用した発光波長変換によるホモジニアス免疫測定法の原理実証を行なった.すなわち,抗体のFc部位に対する結合活性と発光活性を有するキメラ発光酵素で標識された二次抗体が,抗原-抗体反応により抗原を介して固相化抗体(一次抗体)のごく近傍に固定化される.その結果,キメラ発光酵素と固相化抗体も互いに接近する.この抗原-抗体反応による複合体生成に伴うキメラ酵素と固相化抗体の距離の変化を,数nm程度の距離の変化を感度良く反映する励起エネルギー移動現象を利用して検出しようと試みた. まず予め蛍光標識した固相化抗体のFc部分にキメラ発光酵素を直接結合させた場合には,蛍光性分子との距離が数nm以下となり,発光酵素から蛍光性分子への励起エネルギー移動が生じた.その結果,発光酵素固有の発光波長(λmax=450nm)から蛍光色素の蛍光波長(λmax=520nm)への発光波長の変換が観測された.また,蛍光標識固相化抗体の濃度の増加に従い,固相化抗体に結合するキメラ発光酵素量が増加し,その結果として蛍光色素に対する励起エネルギー移動量も増加した.すなわち,発光酵素から蛍光標識固相化抗体への励起エネルギー移動と発光波長の変換が実証された.またこの波長変化をマイクロプレート型ルミノメーターに短波長カットフィルターを付けて簡便に測定することに成功した. またより感度の高い測定を可能にするため,より抗体結合能の高いプロテインGとウミホタル発光酵素のキメラを新規に作製し,プロテインAを用いたキメラよりも約2倍の抗原検出感度を得ることに成功した.
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