研究概要 |
1.ブタ肝細胞球状組織体(スフェロイド)の最適培養条件の検討 親水性ポリウレタン発泡体(PUF)と血清添加培養培地(WilliamsE+10%FBS)を用いることによって,ブタ肝細胞スフェロイドの迅速形成(培養1日目)とアルブミン合成やアンモニア代謝などの高機能発現が少なくとも1週間以上良好に維持された。また,テスト用灌流培養システム(モジュール体積18.8cm^3,細胞量2g)を用いて,モジュールの最適装置条件(固定化細胞密度1.0×10^7cells/cm^3-PUF,モジュール内培地線速度60〜80cm/min)を見出した。 2.ブタ用ハイブリッド型人工肝臓補助システムの構築とその性能評価 上記の結果をもとに,これまでイヌ用として開発してきた体積380cm^3の多細管PUF充填層モジュールを2本使用し,細胞量約65g(生体肝臓の約10%)のブタ肝細胞を充填したブタ用人工肝臓モジュールを作製した。さらに,既存のヒト用体外循環システムを改造し,本モジュールを組み合わせた人工肝臓補助システムを構築した。本システムを温虚血肝不全ブタに適用したところ,延命時間の延長や血中アンモニア濃度上昇の抑制が達成された。ただし,血中アンモニア濃度を肝性昏睡レベル以下に維持できなかったことから,モジュールスケールアップ基準の見直しなど残された問題はあるが,これらの結果から本システムの治療効果への有効性が示された。 3.ブタ肝細胞スフェロイドのヒト肝不全血漿中での機能評価 ブタ肝細胞を充填したテスト用灌流培養システムを使用し,ヒト肝不全中で機能評価を行ったところ,肝性昏睡レベルにあるアンモニア濃度を1時間の内に昏睡レベル以下まで減少させた。これによって,本システムがヒト臨床において良好な治療効果を与えることが示された。
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