研究概要 |
低密度大粒子懸濁気泡塔の流動特性: キノコ菌糸を深部液体培養すると,直径が5〜20mmの球形菌体ペレットを形成する場合が多い。このペレットの密度を沈降速度から推定すると1100kg/m^3であり,このような低密度大粒子を懸濁させた三相気泡塔に関する研究は殆どない。そこで,菌体ペレットのモデル粒子として比重約1.1に調整したプラスチック球を懸濁させた標準気泡塔を用いて低密度大粒子の安定浮遊条件を調べた。粒子を安定に浮遊させるためには,塔径は粒子径の少なくとも5倍は必要であることが分かった。気泡塔型バイオリアクターによるマツタケ菌糸の培養特性: マツタケ菌糸を標準気泡塔とエアーリフト気泡塔を用いて培養した。その結果,塔形式や供給空気流量によって菌体の形態が異なり,大球形ペレット,小球形ペレット,線条ペレットの3形態に分類できることが分かった。両塔形式を比較した結果,菌体増殖速度,菌体収率とも標準気泡塔の方がエアーリフト塔よりも高く,最適空気流速は0.38cm/sであった。タンパク質の分離精製: シュガーエステルを用いて,逆ミセルの形成条件およびこの逆ミセルによるタンパク質の挙動について検討し,タンパク質抽出の可能性を示唆する結果を得た。また,構造を柔軟化したタンパク質をAOT逆ミセルを用いて抽出し,タンパク質構造の柔軟性が抽出にとって重要な因子であることを見いだした。AOT逆ミセル系にタンパク質への水和作用が異なる第三成分を添加し,その影響を調べた。タンパク質の可溶化現象は第三成分の存在によって大きく影響されることが分かった。さらに,非イオン性両親媒性分子としてTriton X-114を用いて水性二相系を形成し,タンパク質の分配条件を検討した。分配挙動はpHや添加物種によって影響された。また,Span 60系逆ミセルによるタンパク質抽出に及ぼす接触方法などの操作条件の影響を調べ,タンパク質の可溶化状態について考察した。回転数には抽出可能な臨界回転数が存在し,かつ補溶媒の分配が逆ミセルの形成ならびにタンパク質の可溶化に強く影響した。
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