第3世代の放射光光源SPring-8では硬X線域において高輝度なアンジュレーター放射が利用可能になる事に着目し、微小なX線ビームを用いてしきい条件下での蛍光X線分光を実現することを目的とした。 平成8年度に微小な発光点からの蛍光X線を1枚の平板分光結晶で分散させ位置敏感比例計数管(PSPC)で検出する分光系の設計・作成を行った。この分光系では大きな取り出し角で測定を行う場合、厚い試料についてエネルギー分解能の劣化が起こる事が知られており、真空蒸着装置を購入し薄膜標準試料の作成を行った。平成9年度にはPSPCを用いる方法以外に、PSPC前に細い走査可能なスリットを用いて分解能を向上させて測定する手法も選択できるように分光系の改良を行った。 平成9年度にはこの分光系とSPring-8からの高輝度なアンジュレーター放射を用いて100μm径程度の領域についてNiK吸収端近傍でのしきい励起条件での測定を行った。試料として用いたNi箔中の不純物からの蛍光X線に加えてラマン散乱を観測し、励起X線エネルギーによるラマン散乱されたX線のエネルギー、強度の変化を測定した。これまで充分なビームタイムを確保できていないため測定例は限られているが目的としたしきい励起条件での測定が実現した。
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