研究概要 |
高温燃焼で生成する微量酸化窒素は800℃程度以下の排ガス中では非平衡であり,適切な触媒の表面では二酸化窒素は強力な酸化剤,一酸化窒素は分解反応経路により酸化剤にも還元剤にも働く.しかし,適切な触媒がないと分解しない.これらの分子が触媒上に次々と供給され定常的に分解するとき,触媒はその分解時に酸化窒素から解放される強力な酸化力(あるいは還元力)に包まれ,気相中の酸素ガス圧に比べて極めて高い(あるいは低い)酸素分圧下にあるのと同じ状態になるであろう.このとき,その触媒となっている酸化物のバルク物性変化を検知すれば高温作動する窒素酸化物センサーができると期待される. この着想に基づき,銅系,鉄系,チタン系のぺロブスカイト型酸化物の導電率が酸素を0.1%程度含む気流中の微量窒素酸化物によって平衡値から大きくずれることを明らかにしてきた.それが酸化物中の酸素量の変化によるものであることを明解に検証するためには微重量熱天秤を用いた重量変化の精密計測が必要である.腐食性である窒素酸化物を熱天秤系に流しつつ安定な微重量測定を行う技術確立に着想以来5年を費やした結果,本年度末に至り漸く手法が確立し,コバルト系ペロプスカイト型酸化物について信頼できるデータを得るに至った.まだ断片的データではあるが,たとえば,500ppmの二酸化窒素は700℃で1%の酸素ガスに相当する酸化力を示し,酸化物中の不定比的な酸素量がそれに対応した量だけ増加する. この結果はNOセンサに止まらず,各種高温ガスセンサ素子の構成法に全く新しい視点を与えるものである.また,この結果は,酸化物触媒の機能の本質を端的に明らかにしたものでもあり,触媒研究においても極めて重大なものと考えている.本研究の成果のとりまとめは現在進行中の微重量法による測定の結果の第1報を公表できる時期を鑑み,平成11年末を目処に行う.
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