研究概要 |
1.酸化物表面の酸塩基特性 酸化物表面の酸化物イオンは水溶液中では水酸基化し、酸型水酸基と塩基型水酸基を生成する。酸型水酸基は陽イオンと塩基型水酸基は陰イオンとイオン交換するサイトとなる。Al_2O_3,Fe_2O_3,Fe_3O_4,TiO_2,MnO_2の各酸化物について、Ni,Zn,Co,Mn,Cu,Pbの各2価金属イオンは酸化物表面上で1:1及び1:2錯体を形成するとして反応をモデル化し、それに基づき各錯体の安定度定数および反応阻害定数を理諭計算し、実測の交換反応挙動を定量的に説明できることを示した。 2.Type430ステンレス鋼の高温酸化反応の初期挙動 ステンレス鋼は、近年、焼却炉材なのどの高温材料として注目されているが、高温環境下ではブレークアウェーと呼ばれる突発的急速酸化反応が起こることがある。この反応機構はまだ解明されていない。ブレークアウェー発生は、高温での酸化初期に生成する保護性酸化物皮膜の性質に依存し、その性質は合金組成、酸化雰囲気、高温に至るまでの昇温履歴で決定されると言う新しい視点から、酸化物皮膜の形態、組成、構造をSEM,XPS,XRDにより検討し、以下の機構を提案した。即ち、主にCr_2O_3からなる保護製酸化物皮膜の生成後、皮膜の破壊と下地合金中の鉄の酸化による破壊部分の補修のサイクルの繰り返しにより皮膜成長が進行するが、破壊部分の補修が何らかの理由により不可能になるとブレークアウェー発生となる機構である。 3.(La,M^<II>)(Cr,Mn)O_<3-δ>薄膜[M^<II>=Ca,Sr]の調製 スプレーパイロリシス法により、基板上にLa-Ca-Cr-Mn系とLa-Sr-Cr-Mn系ペロブスカイト型複合酸化物薄膜を形成し、その電導性を検討した結果、本方法により酸化物薄膜の厚さと組成を制御でき、Mn置換により電導性の向上があり、Ca置換では粒子間焼結性の向上による電導性の上昇が、Sr置換では粒子成長の促進による電導性低下が確認された。
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