研究課題/領域番号 |
08555224
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
有機工業化学
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
杉本 豊成 大阪府立大学, 先端科学研究所, 教授 (30093256)
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研究分担者 |
松井 広志 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30275292)
豊田 直樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50124607)
植田 一正 大阪府立大学, 先端科学研究所, 助手 (10275290)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | 強磁性体 / 純有機系 / 室温 / 漏洩電磁波 / 低周波領域 / シールド材料 |
研究概要 |
今から3年前にTCNQあるいはTCNQF_4とTCNQF_4のラジカルアニオンとの1:2混合塩が、室温下で強磁性的挙動を示すことを見い出した。同様な挙動は、またTCNQ、ジエチル置換TCNQやテトラシアノナフトキノジメタンとそれらのラジカルアニオンとの1:2混合塩においても認められた。従来の純有機の(弱)強磁性体のスピン秩序温度が最高で36Kであることを考えると、これらの1:2混合塩のスピン秩序温度が室温あるいはそれ以上であることは極めて驚くべきことでる。しかしながら、これらの1:2混合塩の与える飽和磁化は、1組成式あたりS=1/2より期待される値の約0.1%程度に過ぎない。一方、2、5-ジメチル置換TCNQ(DMTCNQ)とそのラジカルアニオン(DMTCNQ〓)との1:2混合塩は、上記の1:2混合塩で見られたような飽和磁化の小さい室温強磁性的現象に加え、金属様の高い電気伝導性を示した。従って、鉄、コバルトやニッケルは典型的な強磁性金属であるが、この1:2混合塩は見かけ上その有機類縁体とみなすことができる。この混合塩の結晶構造解析より、結晶中にはDMTCNQ分子とDMTCNQ〓分子とが交互に積層したカラムとDMTCNQ〓分子のみが積層したカラムとが共存する。前者のカラムは電気伝導性、そして後者のカラムは室温強磁性的挙動にそれぞれ関与していると考えられる。最近、伝導性パイ電子と局在dスピンとが共存する有機金属錯体の合成が盛んに行われ、両電子の相互作用について検討されている。従って、この混合塩は伝導性電子および局在スピン共にパイ性であり、これまでに例のない新しい伝導性パイ電子/局在パイスピン分子系として注目される。以上、TCNQおよびその種々の置換TCNQの1:2混合塩に共通して室温強磁性的挙動が観測されるが、その発現機構はまだ不明である。今後とも、種々の物理測定により発現機構を明らかにせねばならない。それと同時に、他の置換TCNQおよびTCNQの拡張パイ共役系の1:2混合塩の作成を通じて、より大きな飽和磁化を示す室温有機強磁性体の探索を継続して行う必要がある。
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