研究概要 |
今年度は、機能性ルイス酸としての二点配位型アルミニウム、チタン系ルイス酸の選択的有機合成における官能基選択性を明らかにした。まず、カルボニル化合物とそのアセタールが共存するような系に二点配位型アルミニウム系ルイス酸、(2,7-ジメチル-1,8-ビフェニレンジオキシ)ビス(ジメチルアルミニウム)を適用すると、カルボニル基を選択的に捕捉、高活性化するため、高い官能基選択性が見られる。例えば、ジクロロメタン中、アセトフェノンとそのジメチルアセタールの等量混合物を1当量の二点配位型アルミニウム系ルイス酸と-78℃で処理し、ケテンシリルアセタールを加えると、アセトフェノンからのアルドール体のみが高収率で得られてくる。これに対して、従来、汎用されているトリメチルシリルトリフラートでは選択性が著しく低下し、またアルデヒドの選択的活性化に極めて有効なジブチルスズビストリフラートを用いると逆にアセタールが優先的に反応してしまう。さらに、アリルトリブチルスズを用いたアリル化反応においても、二点配位型アルミニウム系ルイス酸を用いることでカルボニル化合物のみを高選択的にアリル化することが可能となり、これは四塩化チタンを用いる系と相補的である。一方、二点配位型のチタン触媒を用いても興味深い官能基選択性が得られた。すなわち、4-tert-ブチルシクロヘキサノンとそのアセタール体の等量混合物中において、触媒量の二点配位型チタン触媒存在下、水素化トリブチルスズで還元反応を行うとケトン体である4-tert-ブチルシクロヘキサノンが反応したアルコール体のみが得られ、アセタール体は全く反応に関与しなかった。通常のルイス酸ではカルボニル基とアセタールの官能基選択性は低く、むしろアセタール体を優先的に活性化することが知られている。実際、四塩化チタンを化学量諭量用いて行うと、還元体はアルコール体とメチルエーテル体の約2:3の混合物となり、二点配位型チタン触媒を用いた反応とは対照的な結果となった。
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