研究概要 |
DNA二本鎖をダブルクロスリンクする化合物は、顕著な抗腫瘍活性を示すことがよく知られている。我々は抗腫瘍活性抗生物質カプリマイシンA_3の二量体モデルを分子設計することにより、全く新しい抗腫瘍抗生物質を創製できるものと考え研究を行った。カプリマイシンA_3は協和発酵が放線菌の生産物質から単離、構造決定した抗腫瘍性抗生物質で、プルラマイシン系抗生物質に特徴的なアンスラ-γ-ピロン骨格とピロン環の2位にビニルエポキシド側鎖を持っており、その絶対立体配置は最近(8S,14S,16S)と決定されている。カプリマイシンA_3がエポキシドの16位でDNA中のグアニンのN7位と高い効率で共有結合を形成することを利用した。本年度は、昨年度本研究により見出したABCD環を含むカプリマイシンA_3アナログがDNAのグアニンを選択的に修飾することを利用して、ABCD環の両端にDNA反応部位であるエポキシドを持つ化合物の合成を検討した。エポキシドの位置を制御するために骨格としてナフトキノンを用い、その1、5位および1、8位のフェノール性水酸基を手がかりとしてクマリンエポキシドの構築を試みた。その結果、1、5-ジヒドロキシ-2、6-アントラセンジアルデヒドおよび1、8-ジヒドロキシ-2、7-アントラセンジアルデヒドの合成が困難であることがわかった。一方、カプリマイシンと同程度の反応性を示すことがわかっているオキシラニルメトキシアントラセンの誘導体が容易に二量体モデルに誘導できることが判った。現在この誘導体を用いて、DNAのクロスリンクを実証すべく実験を進めている。
|