研究概要 |
(1)蛍光発光のオン・オフの完全制御 ビナフトールを縮合したインドリルフルギドは,無色開環体は蛍光を出さないが,着色閉環体は蛍光を出す。従って,初期状態が無色体であり,紫外光照射によって着色体が生成すると,可視光照射によって蛍光を出すようになる。この現象は,ある物質が紫外光に露光されたか否かに関する履歴を蛍光発光の有無によって知ることができ,しかも繰り返し使用できる材料に応用が可能である。 (2)コレステリック液晶のピッチの可逆的制御 ビナフトールを縮合したインドリルフルギドはキラルなので,ネマティック液晶の中に混入すると,コレステリック液晶相を誘起する。これに紫外光・可視光を交互に照射すると,フォトクロミズムに伴う構造変化によってコレステリック液晶相を誘起する力が変化するので,コレステリック相のピッチが可逆的に変化する。コレステリック液晶には,そのピッチによって決まる波長の光を選択的に反射する性質があるので,光照射によってその色(反射光)を可逆的に変化させることができる液晶材料に発展させることが可能である。 (3)それぞれのメチレン基にヘテロ環をもつフルギドの合成 置換基の配列に基づく軸不斉をもつフルギドのラセミ化をおこし難くするために,フルギドのそれぞれのメチレン基にヘテロ環,すなわちフラン,チオフェン,ベンゾチオフェン環をもつ化合物を合成した。このうち,ベンゾチオフェン環をもつものは,光照射によって着色閉環体を与えなかった。
|