研究概要 |
昨年度、ベンジルアルコール類を基質としたカルボニル化反応の開発に成功したことを踏まえ、その反応中間体のモデル化合物として、いくつかの有機パラジウム錯体を合成した。これらの錯体の化学的性質を明らかにすることにより、反応機構に関する知見を得るとともに、カルボニル化反応の適用範囲を広げることができると期待される。一酸化炭素加圧下、ベンジルパラジウム錯体[Pd(CH_2Ph)(X)(PPh_3)_2](X=Cl,I)とジエチルアミンとの反応を検討したところ、対応するカルボニル化、ダブルカルボニル化生成物であるアミドおよびケトアミドが得られた。この結果はハロゲン化ベンジルの触媒的ダブルカルボニル化反応が実現できる可能性を示唆するものである。また、新たに1分子のホスフィン配位子を支持配位子とする、フェニルアセチルパラジウム錯体[Pd(COCH_2Ph)(Cl)(PPh_3)(NHEt_2)]を合成し、その塩基性条件下でのアミン、アルコール類との反応を試みたところ、対応するアミド、エステル類が生成することを見い出した。その反応機構について詳細に検討したところ、エステル類はベンゾイル(エトキシ)錯体からの還元的脱離反応により生成することが明らかになった。 一方、カルボニル化反応における基質の適用範囲を広げることを目的として、カルボニル化反応の素反応の第一段階である、有機分子の結合開裂反応(錯体への酸化的付加反応)を種々検討した。その結果、電子吸引性置換基を有する酢酸アリールエステルや、環状エステルであるジケテンの炭素-酸素結合が低原子価パラジウム錯体により開裂し、酸化的付加反応が進行することを見い出した。
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