1)ポリイミドゲル作成の条件検討 ゲル状態のポリイミドを得る方法として、ゲル状ポリアミド酸およびゲル状ポリイミドの合成条件を検討した。ポリアミド酸は、適当な条件のもとで自発的にゲル化し、いわゆる物理ゲルを形成する。物理ゲル形成は、ポリアミド酸の主鎖構造、溶媒、および粘度に依存し、剛直な構造になると、他の添加物などを加えることなくゲル化がおこることが分かった。次に、ポリアミド酸を架橋させることによるゲル化条件を検討した。ゲル化剤としてイソシアネートを用いると、カルボン酸間でアミド化架橋を行うことが分かった。架橋によるゲル化は、イソシアネートの種類に依存し、長鎖脂肪族イソシアネートを用いるとゲル化が促進されることがわかった。 2)ポリイミドゲルの物性 ゲル状ポリイミド誘導体の溶媒組成の変化による体積変化挙動を検討したところ、水-NMP混合溶媒の組成変化に伴い膨潤-収縮相転移を起こすことを観測した。体積変化は、溶媒を選択することにより、不連続、あるいは連続的変化をおこすように制御できることがわかった。この溶媒とゲルの相互作用は、有機溶媒系では主に溶媒の誘電率の効果があるで、水系の場合には、水素結合の組み替えが支配的であることが示唆された。 3)蛍光挙動 上記の基礎的な知見に基づき、ゲル状ポリイミドおよびその誘導体の膨潤収縮にともなう蛍光挙動の変化を測定した。発光挙動は剛直高分子鎖ゲルの高分子鎖の分子間・分子内相互作用、局所的な極性の変化、鎖の運動性などのミクロ環境の影響をうけ、変化した。ゲル構造をポリイミドに導入すると、鎖状ポリイミドに比べ蛍光の失活が少ないことがわかった。また、ゲルを経て作成したポリイミドは通常の方法で作成したポリイミドにくらべて吸光度が低下した。これは、ポリマーの誘電率が低減したことを反映しているものと思われ、とくに超高速エレクトロニクスへの応用に有用であることがわかった。
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