研究概要 |
本研究は、将来のエネルギー事情に鑑み、太陽エネルギーの有効利用の観点から、光エネルギー変換・蓄積機能を有する分子内にノルボルナジエン(NBD)残基を持った高分子材料の開発を目的として行ったものであり、以下に本研究成果の概要を示す。 1)優れた光反応性と畜熱量を有することが知られている、3-フェニル-2、5-NBD-2-カルボン酸(PNCA)の合成研究について詳細に検討を行い、この化合物がベンチスケールでも比較的高収率で合成できることを明らかにした。2)高性能の光エネルギー変換・蓄積機能性高分子の合成を目的として、2、5-NBD-2、3-ジカルボン酸とビスエポキシ化合物との重付加反応による主鎖にNBD残基を有するポリエステルの合成とその化学修飾による高性能化について検討を行った。3)2,5-NBD-2,3-ジカルボン酸無水物とN,N'-置換芳香族ジアミン類との付加反応による分子内に2個のNBD残基を有するNBDジカルボン酸誘導体の合成と、そのビスエポキシ化合物との重付加反応では高分子量のNBDポリ(アミド-エステル)類を得ることに成功した。このポリマーはN,N-ジメチルアミノベンゾフェノンなどの増感反応により優れた光反応性を示すことが判明した。4)分子内にNBD残基を有するエポキシ化合物と、分子内に増感剤基を有するエポキシ化合物を合成し、これらのモノマー類と無水フタル酸との開環共重合を行い、側鎖にNBD残基と増感剤基を有する、自己増感型のNBDポリマーを合成し、その光反応特性と畜熱特性について検討を行った。その結果、得られたポリマー類はいずれも優れた光反応特性と蓄熱特性を有することが判明した。5)側鎖にNBD残基を有する種々のポリマー類の放熱反応と、ポリマーの耐久性の評価を行った。その結果、NBDポリマーの単独でコバルト・ポルフィリン錯体触媒を添加した場合には、その相溶性に起因して効果的な触媒効果は発現できないが、少量の可塑剤を併用するとその触媒作用は飛躍的に向上することが判明した。また、太陽光暴露下においてもNBDポリマー類は比較的安定であることも判明した。
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