プラズマグラフト重合法による機能性微粒子の開発に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08555238
• 研究機関: 北九州工業高等専門学校
• 研究代表者: 原口 俊秀 北九州工業高等専門学校, 化学工学科, 教授 (00038598)
• 研究分担者: 有馬 悠策 触媒化成工業(株)研究開発本部, 所長付 ; 山田 憲二 北九州工業高等専門学校, 化学工学科, 教授 (80101179) ; 畑中 千秋 北九州工業高等専門学校, 化学工学科, 教授 (80180884) ; 井出 俊輔 北九州工業高等専門学校, 総合科学科, 教授 (10041550)
• キーワード: プラズマグラフト重合 / 機能性微粒子 / マイカ / シリカ / メタクリル酸グリシジル / N-イソプロピルアクリルアミド / 酵素固定化 / 金属イオン吸着

研究概要

本年は主としてセラミックス系材料のシリカ微粒子(平均径70□m)とマイカ微粒子(平均径10□m)を基材として、その表面にメタクリル酸グリシジル(GMA)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)をモノマーとするグラフト重合層を形成させることにより得られる機能性微粒子について研究した。
まず、電子スピン共鳴スペクトル分析(ESR)により、アルゴンプラズマ処理したシリカ微粒子表面のラジカル活性点の検出を試みた。処理前の粒子には吸収ピークは見られないが、プラズマ処理後のシリカ粒子には33mT付近に明確な吸収ピークが測定された。このことから、プラズマ処理後のシリカ微拉子表面にはグラフト重合開始能のあるラジカル活性点が存在することが確認された。また、ラジカル捕捉剤である1,1-ジフェニル-2・ピクリルヒドラジル(DPPH)を用いて、種々のプラズマ操作条件下でシリカ粒子表面に形成されたラジカル活性点量を測定した。その結果、本研究の場合、放電出力200W,照射時間1minのとき、最大ラジカル濃度1^*10^<-6>[mol/g-粒子]が得られることが分かった。次に、操作電子顕微鏡(SEM)とフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT‐IR)を用いた表面分析の結果、P(GMA)やP(NIPAm)のグラフト層がシリカやマイカ微粒子表面に共有結合されていることが確認された。
このようにしてセラミックス系粒子表面に形成させたP(GMA)層は水素供与化合物との二次的な反応性を有し、また、P(NIPAm)層は32-37℃の温度で膨潤と収縮の相転移を起こす感温性機能を有する。そこで、P(NIPAm)層をグラフトしたシリカ並びにマイカ微粒子表面へ、10℃と37℃温度差を利用して、酵素リパーゼを包括固定化した。固定化率は37mg酵素/g-粒子であった。また、この固定化リパーゼを用いてひまし油の加水分解によるリシノール酸の合成を行い、反応率82%、生成率43%の結果を得た。次に、シリカ微粒子表面のP(GNMA)グラフト層にイミノ酢酸ニナトリウム(DSIA)を付加させて金属イオン吸着能を有する微粒子を作製した。この微拉子0.5gをpH6.3の銅イオン(II)水溶液(8^*l0^<-5>mol,10ml)に導入し、バッチ法による吸着実験を行い、ほぼ100%の吸着率を得た。またこの粒子はY,Ho,Erのような希土類元素イオンも定量的に吸、脱着することが分かった。最後に、プラズマグラフト重合による機能性微粒子作製のスケールアップについて検討し、放電処理部とグラフト重合部を分離して有する大型装置の試案をまとめた。

研究成果

• [文献書誌] 原口俊秀: "低温プラズマ技術による微粒子表面の機能化" ケミカルエンジニアリング. 41. 35-40 (1996)
• [文献書誌] 原口俊秀: "プラズマグラフト重合による微粒子の表面修飾" 北九州工業高等専門学校研究報告. 29. 41-46 (1996)
• [文献書誌] 原口俊秀: "低温プラズマ技術による機能性微粒子の開発に関する研究" 北九州工業高等専門学校研究報告. 30. 73-80 (1997)
• [文献書誌] 井出俊輔: "DEHPAゲルカラムの金属イオン吸着、分離への応用(第三報)" 北九州工業高等専門学校研究報告. 30. 135-142 (1997)
• [文献書誌] 畑中千秋: "リパーゼによるエリスリトールオレイン酸エステルの合成" 化学工学論文集. 22. 930-934 (1996)
• [文献書誌] KenJiYamada: "Plasma-Graft Polymerization of Vinylmonomers with Reactive Groups onto a Surface of Poly(p-phenylenetelephthalamide)Fiber" J.Appli.Polym.Sci. 60. 1847-1853 (1996)
• [文献書誌] Yasuo Hatate: "Surface Modification of polymeric Microspheres Using Low Temperature Plasma" Proceedings of 7th APCChE Congress & Taipei Chem.Exhibition. 3-7 (1996)
• [文献書誌] 原口俊秀: "低温プラズマ技術による微粒子表面の改質" 化学工学シンポジウムシリーズ56「機能性微粒子とその周辺再新技術」. 151-158 (1997)
• [文献書誌] 伊地知和也: "低温プラズマ技術による高分子ミクロスフィアの帯電制御" 化学工学論文集. 23. 151-158 (1997)
• [文献書誌] Toshihide Haraguchi: "Fabrication of Compositional Gradient Layer between Metal and Polymer by Low Temperature Plasma Technology" Proceedings of 2nd Kyusyu-Taipei International Congress on Chemical Engineering. 1-3 (1997)
• [文献書誌] 吉沢秀和: "低温プラズマにより表面改質した高分子微粒子の蛋白質吸着" 化学工学第62年会講演要旨集. 1. 218 (1997)
• [文献書誌] 原口俊秀: "プラズマグラフト重合による微粒子表面修飾におけるラジカル活性点とグラフト量の評価" 北九州工業高等専門学校研究報告. 31. 95-101 (1998)
• [文献書誌] 畑中千秋: "菌体の固定化を目的としたアンモニアプラズマによるPE中空糸表面の改質" 北九州工業高等専門学校研究報告. 31. 111-116 (1998)
• [文献書誌] 井手俊輔: "CYANEX272担持粒子の金属イオン吸着、分離への応用(第二報)" 北九州工業高等専門学校研究報告. 31. 157-163 (1998)
• [文献書誌] Kenji Yamada: "Surface Modification of Polyaniline Film by Plasma-Graft Polymerization and its Effect on the Redox Reaction" Polymer Journal. 30. 133-137 (1998)