研究概要 |
1研究の背景・目的:本研究では,U.SBureau of MinesのDr.Luらによって開発された軟弱岩盤における地圧測定法,すなわち「2種類の油圧セルを組み合わせた地圧測定法」に着目し,我が国へのこの方法の導入・実用化を目的に,油圧セルの試作,基礎試験および現場適用予備試験を行った。2研究経過:平成9年度は,継続2年度目であり,次の2カ所で現場計測を実施した。(1)中野産業(株)石材採掘現場(凝灰岩,被り110m,被り圧約2MPa)。(2)太平洋炭鉱(株)釧路鉱業所坑内(砂岩,被り600m,被り圧約15MPa)。3計測結果:平成8年度の凝灰岩採掘現場における測定では,計測孔の穿孔時間,油圧セル挿方法等に検討課題が残り、平成9年度では特に油圧セル挿入補助具を開発して実験に臨み,試験としてはほぼ成功裏に完了した。凝灰岩採掘現場で計測された地圧は理論計算で得られた値とほぼ等価なものであり,本計測方法の基本については確認できた。 太平洋炭鉱の坑内における計測では,凝灰岩採掘現場の地圧に対して約7〜8倍の地圧が想定され,それに伴って,油圧セル初期内圧を大きくとる必要があった。しかし初期内圧負荷段階でセル自体の内圧による破損がみられ,油圧セルユニットの耐圧について製作時に細心の注意を要することが分かった。また,現場測定個所の近傍で予期せぬ坑道状態の変化があり,計測結果をまとめるに至らなかった。 4結論:本検証実験において,油圧カプセルを用いた地圧測定方法についての基本的な計測原理,計測システムは確認され,計測ユニットの製作,その設置器具,計測手段など問題点も確認できた。しかし,穿孔した計測用ボアホールの中に油圧セルを設置するとき,計測孔を横断する断層等のき裂が存在する場合,任意の位置に油圧セルを挿入することがかなり困難であることが最大の問題点として認識された。 この問題は,軟弱岩盤における地圧計測を目的とする本試験法の基本的な成立条件に関するもので,種々の自然条件下における計測孔の穿孔,油圧セルの挿入・設置方法について検討する必要がある。
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