研究概要 |
本研究の目的はppmのオーダーの弾性波速度変化の測定技術の実用化である.このような微小な速度変化のモニタリングは極めて長期間にわたる岩盤内地下構造物周辺岩盤の安定性や遮蔽性の評価手段の一つと考えている. 岩盤物性および応力状態に依存するが,ppmのオーダーの速度変化は,1hPa〜10hPa程度の応力変化に対応するので,極めて小さな応力変化を検出する目的にも使用できる.最終年度は実験サイトを岩手県釜石鉱山に絞り,現場実験を行った.別の予算で設置した石井式ひずみ計によるひずみ変化と本研究でえられた弾性波速度変化との相互相関係数を求めた結果,12.4時間周期の相関性が明かとなった.これは弾性波速度変化が潮汐に対応した応力変化による岩盤構造変化を捉らえていることを示している.その変化量は最大2〜3ppmである.この結果は当初の目的であるppm程度の分解能で速度変化が検出できることを示している.釜石鉱山の現場は地表まで450mあるが,1000ppm程度の季節変動が認められる.現在,降水や雪解けによる岩盤の含水比の変化によるものか,あるいは応力状態の変化によるものか,境界要素法による観測現場附近の応力解析を行ない検討している.また実験の期間中に釜石鉱山から数百キロメートル以内で発生した地震にともなう速度変化が検出されている.地震により誘起された観測現場のひずみ変化を概算した結果と速度変化量には明瞭な相関が認められた.また連続観測は測定長16mで行なっているが,126mの測定長でも測定可能なことを実験で明らかにした.
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